「ボクがあくびをしながらパソコンに向かうと,彼女はまだ寝ていた。肩を揺すると,寝ぼけながら顔を洗いに出ていってしまった。きょうはレポートの仕上げを手伝ってもらいたいんだけど,大丈夫かな?」。
quote:とあるエープリルフールの4月1日に公表されたレポートにこんな予想がある。2010年には世界のロボット産業は593億ドルに成長する。それは,3900万台の英国内のロボットの数と一致する。2010年には,すべての家庭にロボットがいることだろう。…3900万台のロボット? そんなことを考えるなど狂っている。実際のところ,1950年代以降,私たちの頭のなかにある未来の映像である空飛ぶ自動車はいまだにみたことがない。
「実際にあれから何年も経ったが,うちにはロボットなんていない。ましてや,緑色の髪の毛の掃除好きなロボットも,背中にゼンマイの穴があるバナナ好きのロボットもいない。…いてたまるか。世界はそれでもちょっとだけ未来になった感じがする。道端で携帯のボタンを必死に押してメールを打っている恥ずかしい人もみなくなった。音声入力できるものもあるし,ちょっと入力にコツがいるけど脳内の思考を読み取って文字を入力するシステムも出てきた。通話するときも無線のヘッドセットを使うのが普通なので,普段は音楽などを聴いていて電話がかかってきたら急に話し出す人もいる。それはそれでちょっと問題にはなっているけど,でもそんな感じで,ロボットがいなくても風景はちょっとだけ変化していっている。
ではいまこの社会で,ロボットと呼ばれるものは存在しないかというと,実はあちこちにいる。毎日朝起きたら会うし,仕事にも勉強にも一緒にいて手伝ってくれる。1日の大半をそのロボットと過ごす人も多い。ロボットは,ネットワーク上で生活するものである。ちゃんと人の形をしているし,言葉もしゃべる。思考する能力も持ち合わせているし,毎日の生活のなかで成長していく。一度調べたことはずっと忘れないし,調べる速度はどんどん早くなってくれる。そして,年も取る。バーチャルな存在かもしれないが,結婚する人間もいる。手を伸ばして触れられるロボットはいなくても,きちんとみんながのぞんでいたロボットはいるようになった。わたしたちも,ネットワーク上で過ごすのが普通になっているし。きっとそんな感じで未来は,いつまでも進んでいくんだろう」。
|